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相続人になる人に行方不明者がいる場合


家出やその他の事情によって、相続人になると思われる人が行方不明である場合は、遺産分割協議ができません。仮に相続手続きを進めるにしても時間も手間もかかるので、遺言書を作成しておくことが望ましいです。



もしも遺言書がないとこうなる!

<トラブルモデルケース>

乙野まつは、夫に早くに死なれて以来、長女と長男を女手一つで育て、今では、長男も結婚し、孫に囲まれて幸せに暮らしていた。
長男乙野太郎夫婦と同居しているが、乙野太郎の嫁とは仲がよく、実の母娘ではないかと近所でうらやましがられるほどである。

しかし、乙野まつにも、全く悩みがないわけではなかった。
それは、長女の乙野はるなが若いとき、見知らぬ男と駆け落ちして以来、全くの音信不通になっていることであった。

一度、探偵事務所に依頼して、行方を捜してもらったものの、高いお金ばかりがかかっただけで、どこにいるのか分からずまい。
それどころか、生きているのかどうかすら分からないという有様。

最初は嘆き悲しんでいた乙野まつであったが、乙野太郎夫婦の支えもあり、長女の乙野はるなのことは考えないように務めていた。

まもなくして、乙野まつは、病気をこじらせて、死の床についた。
乙野まつの財産は、乙野太郎夫婦と同居する家だけで、さしたる財産はなかった。その家も、乙野太郎夫婦が受け継ぐのが当然だと思っていたので、遺言書等は特にしたためておかなかった。


乙野まつの葬式を済ませた長男夫婦は、家の名義を乙野太郎のものにしようとして司法書士に依頼したところ、長女の乙野はるなにも権利があるといわれた。

しかし、長女の乙野はるなは、音信不通でどこにいるのかも分からずまい。

結局、失踪宣告という手続きを経ることでようやく、乙野太郎名義に登記を変更することができたのであるが・・・

失踪宣告がなされると長女の乙野はるなは死亡したものとみなされるという。

まるで乙野太郎の手で姉を殺してしまったような感じがして後味が悪く感じてしまうのであった・・・


そして、数年後。
乙野太郎の家を見知らぬ、中年の女性が家を訪れてきた。
妻が応対したところ、
「乙野まつさんに線香を上げたい。」
とのことであった。

古い友人なのかしら?どこかで見たことがあるような顔だわ。
と思い、妻は、その女性を家に入れて、仏間へと案内した。
仏壇の前に座り、乙野まつの写真と対面した女性はとたんに泣き崩れた。胸が張り裂けんばかりに泣き叫び、気を失いかねないほどであった。

「もし?いったいどうなさったのですか?大丈夫ですか?」
妻はあわてて女性を助け起こし、その横顔を凝視したところ、誰かに似ていると思ったのは、乙野まつに似ているからだということに気がついた。

「もしやあなたは。」
「はい。私は、乙野まつの娘の乙野はるなです・・・」

その夜、乙野太郎とも、何十年ぶりに再会し、身上を話し合ったところ、乙野はるなは男と駆け落ちしたあとは、その男と内縁関係で暮らしていたが、最近になり、男は交通事故で死亡。正式に結婚していないために、一切の財産を相続することができずに身一つで、追い出されて以来、惨めな生活をしていたとのことだった。
最近になって、ふと実家が恋しくなり戻ってきたみたら、母も死亡しており生前に謝ることすらできなかったと嘆いた。

同情の心から、乙野太郎が
「しばらく家にいていい。」
と言ってしまったのが悪夢の始まり。
最初は大人しくしていた乙野はるなであったが、だんだん本性をあらわし始めた。
母の財産は自分ももらう権利があるから家は半分ずつに分けなければならないだの、自分は、死んだことになっているとは何事だとわめき散らすやら、近所からは奇異な目で見られるようになるやらで、厄介者になってしまったのである。

乙野太郎も、
「子どもではないのだから、いい加減、家を出て一人暮らししてくれ。」
と頼んだものの、乙野はるなは、
「この家は、私にも受け継ぐ権利がある。一方的に追い出すとは何事だ!」
と、弁護士を立てる等と言って姉と弟でけんかを始めてしまうのであった。

結局、連日の両者の争いに耐えられなくなった乙野太郎の妻は、家を出て、別のマンションを買うことにした・・・

乙野太郎の妻は、この騒動を思い出すたびにまともに親の面倒も見たことがない義姉に家を取られたようなものだからやるせない気持ちになるのであった・・・



参考条文
((失踪の宣告)
第三十条  不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2  戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。

(失踪の宣告の効力)
第三十一条  前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

(失踪の宣告の取消し)
第三十二条  失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
2  失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

第二章 相続人
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条  胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2  前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条  次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二  被相続人の兄弟姉妹
2  第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

(配偶者の相続権)
第八百九十条  被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。



こうならないようにしたければ!

乙野まつさんは、生前に財産のすべてを長男乙野太郎に譲ると遺言書を書いておくようにするべきでした。

失踪宣告をするということは、その分、手間もかかりますし、残された遺族もよい気分はしないものです。

さらに、長女の乙野はるなが生きて帰ってくれば、相続人としての権利がありますから、相続財産を分割しなおさなければなりません。
しかし、親の面倒も見ずに、行方知らずになっていた人に対して、相続財産を分けるなどということは、まじめに親の面倒を見たものとしては、やるせない気持ちになるのは当然です。


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