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相続人の確定


相続手続きを開始するに当たって、最初に行うことは、相続人を確定することです。

当事者であれば、相続人が誰かは分かりきっていることだと思います。

しかし、被相続人が結婚や離婚を繰り返しており、他にも子どもがいる可能性がある場合は要注意です。一度も会ったことがなくとも、先妻(夫)との間に生まれた子どもも相続人になります。
今の戸籍には掲載されていなくても、昔の戸籍を調べると、知らない子どもの名前が出てくるということもあります。

相続人の確定を行うために必要なことは、戸籍謄本の取り寄せです。

今の戸籍だけでは十分ではありません。

「被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍」が必要になります。

この戸籍は、100%先妻(夫)等はおらず、隠し子がいるわけがないと分かっている場合でも、集めなければなりません。


当事者は分かっていても、他の人は、本当にそんなのかは分からないからです。

例えば、法務局で不動産登記の相続登記をするにしても、法務局の役人は、申請に来た人が本当に相続人なのか、ほかに相続人はいないのかどうか分かりません。

銀行の窓口のお姉さんだって、名義書き換えの手続きに来た人が本当に相続人なのか、ほかに相続人はいないのかどうか見ただけで分かるわけがありません。

免許証を提示したとしても、来た人の証明にはなりますが、相続人であることの証明にはなりません。

口だけで、「私が相続人ですよ。」といわれたところで、本当に信用していいかどうか判断できないのです。口だけで、勝手に名義を変えられてしまうなら怖いですよね。

そこで、確実に他に相続人がいないということを証明するために、「被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍」が必要になるわけです。



遺言書の有無の確認


被相続人が亡くなったら、遺言書があるかどうか確認するようにしましょう。

生前に遺言書のありかを教えてもらっている親戚や知人がいないかどうか。確認しましょう。
金庫や仏壇、被相続人の部屋の中を探したりして、遺言書の有無を確認しましょう。

もしなかった場合には、遺産分割協議により、相続財産を分けることになります。


<遺言書があったら>

仮にあった場合には、遺言書の形式を確認します。

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの形態があります。

まずは、そのうちのいずれに該当するのかを確認しましょう。


・いずれにも該当しない場合

よくあるのが、本文がワープロ書きで、署名のみ自筆で書かれている場合です。全文が自筆でなければ、自筆証書遺言にはなりません。そのため、相続手続きで、正式な遺言書として利用することはできません。
しかし、被相続人の意思であることが明らかであれば、無視するのは非道徳的です。
できる限り、被相続人の遺言に添った形で、遺産分割協議書を作成することが望ましいと言えます。


・公正証書遺言

そのまま、相続手続きに利用することができます。相続人全員に知らせて、遺産の分割方法を伝えるようにしましょう。


・自筆証書遺言、秘密証書遺言

そのままでは利用できません。家庭裁判所で検認の手続きを行いましょう。


<検認の手順>

1、検認の申立てに必要な書類を揃える。

申立てに必要な書類とは
・申立書1通(家庭裁判所でもらってください。) ※参考 家事審判申立書.pdf 当事者目録.pdf
・申立人、相続人全員の戸籍謄本各1通
・遺言者の戸籍(除籍,改製原戸籍)(出生時から死亡までのすべての戸籍謄本)各1通
・遺言書の写し(遺言書が開封されている場合)
※事案によっては,このほかの資料の提出を求められることもあります。

申立てに必要な費用
遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円
連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)

2、1を持って、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所の窓口に行き、検認の手続きをしてほしいと伝え、窓口に1を預ける。

3、後日、原則、裁判所から検認日の通知が送達されます。原則として検認日に、相続人が全員で出席するのが望ましいです。遠方で無理なら、出席しなくても不利になることはありません。

4、検認の実施。検認期日に相続人の立会いのもとに検認が行われ、その結果が検認調書に記載されます。
遺言書は、検認後、申請により遺言書原本に、検認済証明書を契印して申立人に返還されます。
相続人又は受遺者は検認済みの遺言書を使って相続登記、預貯金等の名義書換えをすることができるようになります。

5、検認済の通知。検認に立ち会わなかった申立人、相続人、受遺者等にその旨が通知されます。


<検認ってめんどくさい!>

検認の手続きは結構時間がかかります。その間は、相続登記、預貯金等の名義書換えができなくなってしまいます。
相続登記は、緊急ではないにしても、預貯金等の名義書換えが終わらないと、生活費すら引き出せなくなりますから、大変です。

検認の制度を利用したくないのならば、自筆証書遺言、秘密証書遺言にしたがって、相続人全員で遺産分割協議書を作成するのも一つの方法です。





相続手続き

3つの相続の方法

相続人は、相続開始を知った時から3か月以内に、財産を相続するか、相続放棄するかを決めることになります。
基本的には、被相続人死亡のときから3か月以内に行います。

相続人は、相続の承認、相続の放棄のどちらかを選ぶことができます。
相続の承認には、大きく分けて、二つの方法があります。



単純承認

一つは、単純承認。
単純承認では、財産はもちろんですが、負債も相続することになります。
単純承認の場合は、手続きをする必要はありません。何の手続きもせず相続の開始を知った時から3か月放っておけば、自動的に相続を承認したことになります。もちろん、進んで単純承認することもできます。

なお、次の行為をした場合は、3か月経たなくても単純承認したものとみなされます。(法定単純承認)

1、相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為および民法602条に定める期間を超えない賃貸は例外)
2、相続人が、限定承認または相続放棄をした後でも、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、消費し、または悪意でこれを財産目録中に記載しなかったとき



限定承認

もう一つは、限定承認です。
限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認するものです。

限定承認は、次のような場合に利用されることが多いです。

1、債務のほうが多いのか、プラス財産のほうが多いのかわからない場合
2、相続人が家業や会社を引き継ぎたい場合
3、先祖伝来の家宝など、特定の相続財産を相続したいとき
   
限定承認は、共同相続人の全員が一致してでなければすることができません。
単純承認した者がひとりでもいれば、もう限定承認の手続きはできなくなりますから注意が必要です。

なお、一部の共同相続人が相続放棄をしていても、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われますから、他の相続人だけで限定承認をすることができます。


<限定承認の手続>

相続開始を知ってから3か月以内に、相続人全員で被相続人の住所地の家庭裁判所に、限定承認の申述を行います。
限定承認の審判が行われると、限定承認の効力が生じ、申述人は、相続財産の範囲で相続債務を弁済すればよいことになります。

申立てに必要な書類
・相続の限定承認の申述書1通 (家事審判申立書.pdf)(当事者目録.pdf)
・申述人の戸籍謄本1通
・被相続人の戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(出生から死亡までのすべての戸籍謄本),住民票の除票各1通
・財産目録1通(土地遺産目録.pdf、建物遺産目録.pdf 、現金・預貯金・株券等遺産目録.pdf)
※事案によっては,このほかの資料の提出をお願いすることがあります。

申立てに必要な費用
・収入印紙800円
・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)

手続きの流れ

1、相続人が家庭裁判所に限定承認の申述を行った後は、5日以内にすべての相続債権者および受遺者に対し、2か月以上の期間を定めて公告を行い(927条)、知れている債権者には個別に催告を行う。
2、公告期間満了後、相続債権者に、それぞれの債権額の割合に応じて弁済をする(929条)。
3、その後、受遺者に弁済をする(931条)。
4、相続債権者・受遺者に弁済をするために相続財産を売却する必要があるときは、競売(民事執行法195条の規定により、担保権の実行としての競売の例による)による(932条本文)。
ただし、相続財産の全部または一部について、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い価額を弁済することにより、競売を止めることができる(932条ただし書)。



相続放棄

どう考えても負債しかないから、相続したくない。
そんなときは、相続放棄の手続きを取ることになります。
相続開始を知ってから3か月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所に相続放棄の申述をする必要があります。相続放棄申述の受理は審判によってなされ、受理証明書が交付されます。
相続放棄をするには、必ず家庭裁判所に申述する必要があります。遺産分割協議書などに相続放棄すると書いてもなんら効果がないので要注意です。


<相続放棄の手続>

申述に必要な書類
・相続放棄の申述書1通 相続の放棄の申述書(20歳以上)、相続の放棄の申述書(20歳未満)
・申述人の戸籍謄本1通
・被相続人の除籍(戸籍)謄本,住民票の除票各1通
※事案によっては,このほかの資料の提出をお願いすることがあります。

申述に必要な費用
・申述人1人につき収入印紙800円
・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)

※相続放棄したら生命保険金はもらえないのか?
相続放棄したととしても生命保険金の受取人としての地位は変わりません。
もちろん被相続人が受取人であった場合は、相続財産に含まれてしまうことになりますが、被相続人以外の人が受取人として指定されていた場合は、相続財産ではないため、受け取る権利があります。

※相続放棄の3か月を過ぎてもあきらめないで!
自己のために相続の開始があったことを知ったときは、普通は親が亡くなったときが多いと思いますが、何も財産がなかった場合は、借金の請求を受けたときからとなる場合もあります。
また、相続放棄の3か月以内という申述期間を伸ばす手続(相続放棄の期間伸長)もあります。


遺言書を書く際の注意点


1、確実な遺言には公正証書を利用しよう

確実に自分の意図したとおりに相続してほしいのであれば、公正証書遺言が一番です。どんなに信頼できる人であっても、莫大な財産を前にすると人が変わってしまうものです。
自筆の遺言だと破棄されてしまったり、偽物ではないかと相続人の間で争いになってしまうこともあります。
さらに、自筆の遺言の場合は、家庭裁判所で検認の手続きをしなければならないので、時間も手間もかかります。


2、文章は厳密にチェックする。

・相続人に残すのであれば、「相続させる」です。
・相続人でない人(受遺者)に残すのであれば、「遺贈する」です。
単純に上げるだとか譲るという言葉では、相続なのか贈与なのか分かりません。贈与と認定されてしまうと、贈与税がかかってしまいます。


3、遺産を漏れなく記載しよう。

遺言書を書く際には、遺産を正確に整理してから書くことです。不動産や預貯金、動産(家財道具)などをもれなく記載しましょう。記載漏れがあった場合は、その財産を誰がもらうかで、相続人の間で争いになることもあります。
記載漏れに対応するための文言としてよく利用されるのが、
「その他、当遺言書に記載のない一切の財産は○○に相続させる」
という言葉です。
この言葉があれば、記載漏れがあったとしても、特定の人に相続させるということで納得できるはずです。


4、予備的遺言を入れる
遺言の中に記載した推定相続人や受遺者が遺言者より先に死亡することがあります。それでは、その部分については無効となってしまいます。
そうした事態に備えて、予備的遺言を入れておくことです。
「もしも、遺言執行時に、○○が死亡している場合は、○○に相続させる。」
という文言です。
この文言を入れることで、書き直しする必要がなくなります。特に自分と同世代の配偶者の分については確実に入れておきたいものです。


5、夫婦は一緒に遺言書を作っておくべき。
日本人の平均寿命だけ考えれば、同世代の夫婦は、夫の方が先に亡くなる傾向があります。そのため、夫だけが遺言書を作るというケースが多いようです。
しかし、同世代であれば、妻も同時に遺言書を作成しておくのが望ましいです。
なお、夫婦の共同遺言(同じ用紙に二人で書く)という形では、法的な効力がないので要注意です。


6、遺留分を考慮するべき
相続人には、最低限の相続財産をもらう権利があります。それが遺留分といわれるもの。
例え、遺言書で、すべてを配偶者に相続させるとしていても、子どもも、もらう権利はありますから、異議を唱えてくれば、認めないというわけにはいきません。
遺留分を無視する場合は、それ相当の理由を記載しておくようにしましょう。
例えば、生前に家を建ててやったとか、車を買ってやったとか、他の子どもよりも多大な学費を支払ってやったなどの理由が挙げられます。

※遺留分・・・遺留分は被相続人の兄弟姉妹以外の相続人にのみ認められている。
・直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の1/3(1028条1号)。
・それ以外の場合は全体で被相続人の財産の1/2(1028条2号)。

具体的には以下のようになります。


相続人が親のみ   (遺留分)財産の三分の一   親 三分の一  
相続人が配偶者のみ (遺留分)財産の二分の一 配偶者 二分の一
相続人が子のみ (遺留分)財産の二分の一 子 二分の一
相続人が配偶者と親 (遺留分)財産の二分の一 配偶者 六分の二 親 六分の一
相続人が配偶者と子 (遺留分)財産の二分の一 配偶者 四分の一 子 四分の一


なお、絶対に、相続させたくない相続人がいる場合は、家庭裁判所に相続人の廃除の申請をしておくことです。(892条)


7、遺言執行者を指定しよう
遺言者の死亡後、遺言の内容を実現する責任者が遺言執行者です。遺言執行者には、推定相続人や受遺者、専門家(弁護士や行政書士など)がなる場合が多いようです。
信頼できる人がいない場合は、専門家に依頼するのが一番です。
弁護士や行政書士は、守秘義務がありますから、遺言の内容について他言することはありませんし、確実に遺言執行のための手続きを行ってくれます。


遺言書文例 息子の妻に介護の世話をしてもらっている場合の遺言書の例


  遺言書

第1条 遺言者は、次の財産を、亡き長男 甲野小太郎の妻 甲野なつき(昭和52年5月5日生)に遺贈する。
株式会社ゼット銀行千代田支店 総合口座通帳 普通預金 口座番号 1234567のうち、600万円

第2条 遺言者は、次の財産を、亡き長男 甲野小太郎の子 甲野孫太郎(平成15年5月5日生)に相続させる。
株式会社ゼット銀行千代田支店 総合口座通帳 普通預金 口座番号 1234567のうち、200万円

第3条 遺言者は、次の財産を、次男 甲野小次郎 (昭和50年5月5日生)に相続させる。
株式会社ゼット銀行千代田支店 総合口座通帳 普通預金 口座番号 1234567のうち、200万円

第4条 遺言者は、次の財産を、長女 丙野翔子 (昭和55年5月5日生)に相続させる。
株式会社ゼット銀行千代田支店 総合口座通帳 普通預金 口座番号 1234567のうち、200万円

第5条 遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として、亡き長男 甲野小太郎の妻 甲野なつきに指定する。

第6条 その他、当遺言書に記載のない一切の財産は亡き長男 甲野小太郎の子 甲野孫太郎に相続させる。

第7条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として次の者を指定する。

     東京都千代田区九段南1-2-1
     行政書士 乙野太郎

第8条 遺言執行者に対する報酬は、遺言者がこの遺言について遺言執行者との間で取り決めた金50万円を支払うものとする。


付言 亡き長男 甲野小太郎の妻 甲野なつきさんは、実の娘ではないにもかかわらず、献身的に私の介護をしてくれました。そのお礼として、多めに財産を遺贈したいと思います。どうか母の気持ちを汲み取ってください。


平成○○年7月1日

住所 東京都千代田区九段南1-2-1
 
遺言者  甲野花子 印



<ここがポイント>

・息子の妻は相続人にならないため、「遺贈する」という形になる。

・なお、養子縁組した場合には、他の兄弟と同様に、相続人になるため、「相続させる」と記載することになる。

・この例では、一つの銀行預金を現金で分ける形になっているが、ちょうどよい金額があるケースは少ないと思います。その場合、残りの現金を誰が相続するのかを明確にしておくことが大切です。
この例では、「その他、当遺言書に記載のない一切の財産は亡き長男 甲野小太郎の子 甲野孫太郎に相続させる。」として甲野孫太郎に帰属することが明記されています。

・できれば遺言執行者を指定しておくべき。遺言執行者は自分より若い行政書士や弁護士を選ぶようにしたい。


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